フォークソング

フォークソング

 

神保町の表通りはよく晴れている。

 

「関口くん、お茶が美味しいね、」

 

悪い顔をした中禅寺が、紅茶を啜る。神保町の古本屋のカフェの一室である。 

 

(きみは、できる子だよ、よいこだよ、と、甘く囁きながら、やにわになんだか分からないものが、尻を何度も撫でて、両手で何度も双丘をもみ、その間を割ると、濡れたなかを、太い中禅寺の雄が、割り込み、何度か優しく奥を開くと、急に何度も乱暴に突き上げ、いい、いい、君はいい子だ──と、最奥を貫いて、悲鳴をあげさせる───)

 

「‥‥‥昨日は、お楽しみだったみたいじゃないか」

「人ごとみたいに言うなよ、」

 

どよどよ、と、狼狽しつつ、動揺しながら、関口が紅茶を飲もうとして、慌てすぎて、口の端に歯をかちと当てて、痛さのあまり、カップを落としそうになる。 

 

「あつっ」

 

「馬鹿だね」

 

中禅寺は、学生寮の同室で、毎夜、関口を抱く。そのことに、関口は舞い上がるほど、嬉しい反面、いつも不安だ、飽きられたらどうしようとか、捨てられたらどうしようと。中禅寺は、いい男だ。男から、みても。 男同士で、不毛なことをと人は言うかも知れない。けれどもそれにまして背徳的な蜜みたいなこの行為はやめられない。なんてやましいんだと、関口は俯く。恥ずかしくて、恥ずかしくて、でもやめられなくて、中禅寺に執着みたいなものがあって、離れがたく、女でない自分に、もの悲しくなる。でも、好きな人との行為は、死ぬほどよい心地をもたらす。中禅寺は、関口を抱くことをどう考えているのだろう。

 

中禅寺の男根が、なかを擦るのを思い出して、手のひらが汗ばんでカチカチと震える手で、もう一度、ティーカップを持とうとする。

 

「もう、そのへんでいいよ、関口君、緊張症状がでている」

 

そう言うと、テーブルの横上のフックに掛かっていた学生用のフロックコートを取って、立ち上がって、様になるように着ると、同じようによろ、と立ち上がった関口を両腕で支えた。関口は赤面して、震えていた。

 

支えられるように、カフェを出ると、涼しい秋の風に当たって落ち着いてきた関口は、ありがとうと中禅寺から身を離した。少しこちらを見つめた中禅寺の後ろを、少し離れて歩く。

 

「関口くんは、買い被りすぎだよ、僕のことを」

 

なにか、思案したかのようにそう言って、中禅寺が、振り返った。眉ねに、皺が寄っている。学生寮に戻る途中だ。

 

「君は僕を理解してくれていると思ったんだけど。まったく、分かってない。僕が苦しむ」

 

なじる中禅寺

 

「どういうことだい、中禅寺」

「いいか、僕が抱きたいから君を抱くんだ、君はいい僕の伴侶だよ。僕のことを多少理解してくれている。でも、全部、理解しなくてもいい」

 

「理解しなくてもいいってどういうことだい。僕は所詮、性欲処理とかそういう存在なのかい」

 

「噛みつくなよ」

 

「き、きみは、僕のことをどう考えているんだい?だいたい、僕を抱くことをどう考えているんだい、性欲処理なだけなんて────嫌だ」

 

君は、君は、と、震えながら訴えていると、 逆にそう言うと、大人っぽい中禅寺が眉を上げて、意地の悪い笑みの表情をした。そしてつかつかと関口に詰め寄ると、

 

「僕は、好きな人しか抱かないよ。」

 

そう言って、フフ、と鼻で笑うと、中禅寺は、関口の首根っこをひっつかむと、路地裏にひっぱりこんで、汚ない埃だらけの壁に彼を押し付けて、強く深く接吻してくる。布越しに 両手で、関口の腰、尻、割れ目、竿、亀頭と、いいところを確実に着実に追いたてて、「まぬけだ、君は」、と笑って言いながら、ぐいと足で脚を開かせると、表通りから人に見られてしまうかもしれないのに、ズボンをずらしおろすと、昨日も散々責め立てたところに、凶悪なそれを突き立てて揺すりあげる。熱く熟れた内壁がまた責められて、肉体が悦びに溶けそうになる。良すぎてぼろぼろ涙がでる。(やめろ、中禅寺───)と唇を奪われていて、声に出せない悲鳴をあげながら、関口は「ああ、はあはあ、ああ、いい、」と、吐息混じりのあえぎ声をあげ始めた。

 

茶店の帰り道の、お話。